【12話】 ホクロの女部長と三角の髪型の先輩
1993年の秋、僕はファミレスでバイトを始めた。バブルはもう、崩壊して世の中は暗い話題も多かったけど、僕は一応は青春を謳歌していたように思う。

* 解説ブログ「20世紀少年」

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第2音楽室では、唇の右上にホクロがある3年生の女部長が僕らを案内してくれた。


見学に来ていたのが僕とトシちゃん以外に7~8人くらいいて、僕らは椅子に座らされてしばらく様子を観ていたけど、女部長以外は僕らのことには関心がなさそうで、それぞれが楽器を鳴らしたりしていて、少し”サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド”のはじまりのような感じだった。


しばらくすると長身の前髪を三角に固めた三年生の先輩が緑のエレキギターを持って僕らに近づいてきて、レッド・ツェッペリンの「Whole Lotta Love」のリフを弾きながら、「どんなの好きなの?」と訊いてきた。

”こいつなんか、ムカつくなぁ”と 一瞬、心の中で思ってしまって僕は無視していると、僕の横に座っていたいかにもという長髪で背の低い同級生の奴が、「BELIEVE」でメジャーデビューしていたLUNA SEAとかX JAPANとかが好きだと答えていた。

この長髪の背の低い奴が、指だけ出ている合皮のロック手袋を登下校時にしてきて、校門から数十メートルしたところで隠すように鞄にしまっている姿を目撃して、嘲笑のネタにされるのはもうちょっと後のことである。



この頃、すでにX JAPANはトップバンドの一つだったが、個人的な好みではなかったので、僕自身はテレビで耳にするくらいで、実際にどのくらい影響力があるバンドとかも全然わからなかったけど、クラスメイトのショートカットのぽっちゃり系の女の子で、ボンジョヴィとかミスター・ビッグが好きな女の子がいて、X JAPANも大好きで、ついつい「元気が出るテレビ!!」の話題を振ってしまい、しばらく口をきいてくれなくなってしまったことで初めて、影響力の大きさを僕は知るのである。


もちろん、その後のHIDEの死に対するマスコミの大々的な報道もリアルタイムでみてきたので、その後も影響力の大きさは感じることになるわけだけど、大人になって大人だけが入店を許されるお店で接客してくれた僕より2つくらい年下の女性が2007年以降のX JAPANの再結成と活動を熱っぽく僕に語り、YOSHIKIのことを「あの人は才能がある人だから」と一方的に聞かされた時も、彼らの影響力の大きさを改めて感じたのである。



そうこうしている内に女部長が大きな声で部員の先輩たちに「ちょっととめてぇー」と、まるでドラマに出てくる典型的な女部長みたいな感じで先輩たちの演奏を止めて、自分も黒板の右脇にあるオルガンの前へと向かっていった。


緑エレキの三角の先輩もギターを肩から外して、黒いケースからクラリネットを出して、黒板の前へ行って並び始めた。


それぞれの先輩が楽器を替えたりしてオーケストラのように自分の持ち場だと思われる場所に並んで、勢ぞろいした頃には本当に軽音版のオーケストラみたいになっていた。



「じゃあ、聴いて下さ~い!」と女部長が僕らに言うと同時に演奏が始まった。

それは素敵なSHOWの始まりだった。
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